ほんとうの中国の話をしよう(余華 飯塚容訳 河出書房新社 2012)

中国に行くかもしれないので、中国に関するものを読んでいる。
中国国内で発禁処分、と帯に大書してある。
そして、表紙は真っ赤であり、明らかに毛語録に模倣していて、日本語タイトルもまたどこかで聞いたようなものになっている。
内容は、文革を少年時代に過ごした筆者の当時と経済中心になっている現在を比較する視点で様々なテーマをとりあげ、エピソードをちりばめたエッセイである。このエピソードが、どれも興味深く、だれないで手際よくまとめられている。戦後の中国の変転のダイナミックな激しさは、強い政治主導が1つの原因であるのは確実だろう。そのような中で、生き抜くためにそれを冷静にみる目は、民衆のもの(知恵)だったろうし、また芸術の視点でもあるだろう。つまり、この両者が重なる条件が現代中国にはあり、魯迅(10のエッセイのタイトルの1つだが)から、この著者まで脈脈と流れているもののような気がする。
「革命とは何か?過去の記憶の中から引き出される答えはさまざまだ。革命は人生を不確定要素に満ちたものにする。人の運命は一朝一夕で、まったく変わってしまう。ある人はとんとん拍子に出世し、ある人は奈落の底に落ちていく。」
著者の革命に対する解釈は平凡なものだが、しかし、生活の実相からみれば、革命の結果とはこのようなものとしか言いようがないだろう。そして、理想や理念よりも、このようなところに革命の魔力も、このようなものでしかないその限界もある。
10のエッセイの最後の2つは、現在の中国ではやっている2つの言葉「山寨」「忽悠」をめぐってだ。「山寨」はコピー、物まね、という意味で、「忽悠」はデタラメ、騙し、ということ。もちろん、この本の装丁とタイトルは、このことを意識しているだろう。秀逸なあとがきの末尾にはこう記されている。
「私はこの本で、中国の痛みを書くと同時に、自分の痛みも書いた。中国の痛みは、私個人の痛みでもあるからだ。」

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by isourou2 | 2015-01-23 22:20 | テキスト


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