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奇怪ねー台湾(青木由香 東洋出版2011)

最近、海外旅行づいている。昨年、香港、今年はもうギリシャと台湾に行った。もちろん、他人のお金で(ある意味でビジネス)旅行である。成田まで行くお金がないくらいなので、そうでもしないと海外へは行けない。
海外に行く前には、出来ればその国についてよく知っておきたいと思う。それが、お邪魔する方の礼儀だと少しトンチンカンかもしれないが思っている。しかし、実際はそんな時間がない。地球の歩き方に載っている簡単な歴史を機内で読む程度になってしまう。地球の歩き方、というのはお守りみたいな感じがあり、もちろん買わないが、必要そうなところは図書館で借りてコピーしておく。地図とか、電車の乗り方とか、空港マップとか。でも、実際に使うのは、地図だけだ。電車とか空港とかは、初めての人でも分かるように作られているものだし、聞けばどうにかなる。ただし、街はそこまで親切ではない。でも、地図だって、現地で手に入る可能性が高い。だから、何となくのお守りである。
台湾に行くとなって、図書館で色々と台湾に関する本を借りた。しかし事前に読了したのはこの本だけだ(あとは、旅先で「台湾ナショナリズム(丸川哲史)」を読み終えた)。
この本は意外にいい。台湾の雰囲気が伝わってくるのである。つまり、地球の歩き方みたいな情報とも、歴史書のような情報とも違う、肌合いや体温といういわく言いがたい情報。それが、本の装丁を含めたところで伝わってくる。ああ、こういう感じか、という、、、少なくとも美大女子の視点からはこういう風に見えるのか、そしてぼくの中のそれらの人たちを思い浮かべてみれば、だいたいなんか台湾の肌合いが(ある種の客観性を帯びて)位置づけられてくる。それで、なんかぼくはホっとしたのだった。
そう、この本のテイストは、美大女子っぽい。といっても、ぼくが知るそれらの人たちはもう15年以上前のことだけど。多摩美(著者が卒業)や武蔵美、女子美や京都造形大、といったもろもろの学校(それの作風の違いまでぼくはよく知らない)の学生の感じがある。というか、そういう人が社会に出て、そういう感じでは生きていくのは難しく、いろいろ苦節もあり台湾にたどり着きノビノビとした、という遍歴を感じる。そのテイストが本に生かされている。基本的には、ぼくは嫌いではない。嫌いにはなれない。
この本で直接役だったこともある。まず、台湾のトイレは紙を流さないこと。拭いた紙は、くず箱の中に入れる。それではトイレが臭くなりそうだが、そうでもない。トイレの作法はその風土に根ざしたものだから合理的なのである。理由は分からないが臭くない。
もう一つは、台湾の人が人前であがらない、という指摘。旅の采配をしてくれた(展示のキュレーターの)女の人は、なんていうか日本的感覚からすると大らかというか細部を詰めない感じの人だったが、人前で話す時は立て板に水のようにトウトウと立派な人のようだった。よく分からなかったのだが、これは、きっとあがっていないせいだろうと思った。というか、韓国の人も中国の人も日本の人ほどあがらないような気がする。自然体だ。
ただし、彼女いわく、細部をつめない感じはぼくがそういうことを嫌うタイプの人と読んでのことだった、そうだ。そう言われるとたしかに反論しずらいが、そういう決めつけをして平然としているところがなかなか大ざっぱとも言えるし、また立派だとも言える。
自分と人の差を気にしない、という指摘もそうかもしれない。旅先で、ぼくは一人でやたらに他人に気を回している自分に気づいた。まわりは、なんかもっと好き勝手に自然体で生きている。それでいてとても親切だ。日本は島国で狭いから常に他人を意識して細かい調整をしないと生きていけない、みたいなことが頭に浮かんだ。けっこう息苦しい社会だということが、なんか他国の肌合いにふれると実感できる。
この本には、へんてこなものや少しズレているものを偏愛する美大女子が、その価値観で生きていける場所を探して台湾に出会い、ちょうどよく花開いたという著者のバックストリーが込められている。
by isourou2 | 2015-07-05 23:51 | テキスト


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