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「ソウル市民 ソウル市民1919 ソウル市民昭和望郷編」青年団

演劇の空間というのがどうも苦手だ。演劇の空間を意識してない演劇が苦手。意識しているからといって、好きかどうかわからないが。招待券をもらったので、観に行った。平田オリザである。喰わず嫌いだが、なんか面白くなさそうイメージだった。青年団という劇団名も、そそらないことしきりである。全然期待なしで行った。それが面白かった。

芝居の演技は、我慢できるぎりぎりだ。日常で、演技している人がいれば鼻持ちならないのに、なぜ演劇だと、我慢できるのか。生身の人間がいるのに、そこに人間がいないということは、気持ち悪くないのか。そういうことを感じさせないぎりぎりであった。だからといって、ぼくにいいアイデアがあるわけでもなく、ますます自然さを追求するか、ますます虚構化を追及するか、どちらにしてもたいして興味がない。能はすごかった。生身だけど、抽象。抽象だから、自由に解凍できるし、気にさわらない。ともかく、そこらへんのことはとりあえず、通り過ぎてくれれば、まずは席に座ってられる。熟年の人を年相応の人が演じていてくれるだけで、今まで見ていた演劇とは大違いで、ほっとさせられる。

ソウル市民の初演は、平田オリザ26歳の時だそうだ。この人は、その年で、やりたいことがはっきりやれていたのだ、と思った。この芝居の幕切れは、なるべくなんでもないタイミングで終わることに力をそそいでいるんだ、と思った。劇場に入ると、すでに舞台には役者が、背を向けてイスに座っている。これも、なんでもない時間の導入。はじまりは、それでいいけど、どう終わるかは難しい。でも、きれいに、なんでもない時に終わった。それで、ぼくは、背中が少しゾクとした。ちゃんとやれてたし、やられたから。一緒に観た人は、家族のアルバムを観てそれから終わったと、そこに円段を感じたようだけど、ぼくはちがうと思った。それじゃ、つまらない。

劇の後、平田オリザのトークがあり、なんとなく、感激が薄れた。せっかく説明しすぎないように、劇で気を使っているのに、説明していたからだ。

ソウル市民で、手品師が現れて、途中で居間から姿を消してしまうのだが、ぼくは、消えるところを見てなくて(トイレに行きますといい退室したそうだから、たんに見てなかっただけだけど)、
本当に消えた!と思い、どういう仕掛けか、なんて考えたり、そこから、ぐっとマジカルに見えてきた。

それで、あとの2作は、それほど感想はない。似たような設定とかの方法論も、平田オリザのやり方なら当然出てくるだろうけど、その当然さが、安易な感じもした。

それにしても、ぼくは歴史に疎い。全然基礎知識がない。勉強しなきゃな、と思った。

今、笙野頼子の一文、さっき引用しなかったのを思い起こした。「成田の農家の所有する土地はただ単にお金、地価に換算されるものではなく、家族の生き方、入植後代々の歴史とか、無農薬農業という選択をも含む、自分の人格にかかわるものではないかと(あくまでも私の主観でもそう)思えたのだ。」ちょっと当たり前なことだな、感じたので引用しなかったが、この植民地の話にはふさわしい予感がした。この文は、「反対派の中には、空港は軍事関連に使われる場合があるから嫌だという考え方もあったというし、一つの土地を所有する事によって人は様々な表現を取ると思ったのだった。人は戦う生き方を選ぶしかない時もあるのだろうと。」とつづく。

青年団という名前は皮肉を含んでいるんだ、と観終わってから分かった。だからといって、好きな劇団名とも思わないけど、それが分からないほど、平田オリザは面白くなさそうなイメージだったということだ。皮肉ぶくみの青年団は、平田さんの劇団名には、ぴったりで、やはり、やりたいことが分かっていてやれているんだな、と思った。
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by isourou2 | 2006-12-22 20:00

「1,2,3、死、今日は生きよう  成田参拝 」笙野頼子

最近の関心事は、私有地とか公共地とか、の土地の所有の問題。この本は、それに触れてそうだから、借りた。笙野頼子は以前から気にしてはいたけど、なんとなく読めない文体だった。この本も最初のあまり有効とは思えない言葉遊びにひっかかり、もどかしく、読めなかったが、「語、録、7,8、苦を超えて行こう」から読んだら、すごい、と思った。欝と躁のブレンドが絶妙なのだ。狂いながら醒めて醒めながら狂って生きていく、感じがする。ぼくには、死ぬなら狂い死にしたい、それよりも狂い生きしたいという熱望のようなものがあるが、ここでの文章はかなり理想に近い。目に入った文章をいくつか。「埋没することと客観化することの両方が手放せないのである。」ああ、難しいな。読んでしまう。この本もう一回読んでから書くか。吉増ごうぞうに、リズムの魔、という言葉があった。このあたりは、絶頂期の吉増ごうぞうを思い出す。リズムの魔があるのである。本書のどこかで、現代詩出身だと誤解されるが自分はそうではない、と書いていたが、しかし、これは、やはり最良の現代詩ではないかとも思った。ちがいは、身辺のリアリズムから離れまいとする強い意志か。自分の視点、自分の生活、そこから踏み出すのは配慮をもって。そんな作者が、ネコのようにそろそろと、成田に近付く。まだ、3農家が残っていて空港に反対しているということをぼくは知らなかった。「第二滑走路の建設というのは成田に対して官警がした、最近の中では一番ひどい行為らしい。それは、ワールドカップに合わせて急に作られた。例えば、普通の滑走路を作ろうとすると、少人数でも農民がそこには残っている。ゆえに、その土地に作ることが出来ず、滑走路は通常より二千百八十メートルと短い。また闘争本部があるというので、誘導路(どういうものか私はよく分からない)もへの字に曲がっている。寸たらずへ曲がり、出来てみるとなぜか、そこに居座っている人がわがままで邪魔をしているかのように一瞬は見える。しかしそれは違う。要するに、人の家すれすれのところにわざと厭味のようにへの字のや短いのを拵えたのだ。」そういうことはよくあることの気がする。テント村でも。「自分が地上げされる側、という意識はそういえばなぜかなかったのだ。というか災難を潜り続けながら地上げという言葉に実感がない。でもその一端を、取材することに私は熱心だ。見えなくされる側、黙らされる側、圧倒的既成事実の前に脱力する側。常識や筋道を語れば納得出来るような簡単な事をたちまち押し流して来る大きな力によって、黙殺される側についての一部始終を。」これを書き写しながら、やはりテント村を思い出し、そして、自分が押し流す側であることもある(そういう非難されることもある)ということを思い出す。「所有とは、意識の緊張を強いるものなのだ。その意識の緊張が自我の起源であり、内面の、個の、起源なのだ。律令制が崩れて土地の集積が始まってからずっと、日本人はそのシステムの中にいた。持たざるものさえも地主になる可能性を持つという点では、所有という意識から逃れられないのだ。」「その小さな家は「私の」領土であった。また猫と私が暮らす「みんなの」聖域であった。」「共産主義の挫折とは理論の挫折には思えなかった。むしろ誤適用の問題に思えた。土地所有と宗教をその誤適用ではクリアできない。」ここらへんが、土地についてもこの本の中での考察だけど、なるほどと思うが、すこし物足りなさもある。自我と所有が直結していると結論できるのかな、とそこは考えたいと思う。他の本は読んでないけど、この人の最高傑作ではないかと思う。たぶん。これから、もっとすごくなるかもしれない。好きなところ少し。「いつものように寝入りばなに言葉が降ってきた。降るというよりそれはまさに頭悪い教祖的な言葉の見つけ方だった。「来る、言葉が、来る、言葉が、来る」という漢字で意図的に待っていたせいでその言葉は来た。異常に頭悪そうな、本当にインチキ霊能の来方で来た言葉だった。意識の皮一枚下にあるだけみたいなみえみえだった。そういう来方で降ってきた言葉は初めてだったし、とっさに扱い方も判らないほど幼稚なフレーズだったし。でも、夢の中で、太い、下品なおばさんの声がこう言ったのだ。
モリナガが、くるぞよ。」「仏の二の腕は体毛がなく筋肉が落ちていた。輝クー!アイドルに会った無神経な人のように、私は手を打って仏に叫んだ。輝クー!ムナシー!」また書くかもしれない。
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by isourou2 | 2006-12-22 19:02

感想とは?

ぼくは、かなり記憶力がないのは自他認めるところです。それで、日々読んだり、見たり、した表現物についての感想を書くことにします。ほっておくと、ふわふわと霧散してしまう事柄だから、かなりメモ的になりますが、それなりに読めるものにしようと思ってます。なんか、冬になってきて、小屋にこもることも多くなりそうな感じがするのも始めようと思った動機なので、そのうちやるきがなくなるかもしれません。
感想と言う言葉について。感想と批評は違うと思ってます。批評というのは、相手のそれまでの文脈や作者を包む歴史的な文脈を考慮してそこからその作品について何事かを言うことだと思ってます。一方、感想は、あくまでも自分の立場から、その作品について何事かを言うことで、批評をするだけの準備もなくまた、気軽に書きたいがために、感想にしようと思いました。正確な引用や確認などはあまりしません。思い違いや誤りも多いと思います。感想世界とは、ぼくの環境に対する反応のようなものです。ふわふわと飛び散っていくものを集めていくと感想世界の地図が出来ていくのではと期待してます。付き合いいただければありがたいです。

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by isourou2 | 2006-12-19 20:56


日々触れたものの感想をかきます。


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