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ベネディクト・アンダーソン グローバリゼーションを語る(梅森直之編著 光文社新書 2007)

ちょっと前に読んだ本。
アンダーソンの短めの講演2つと、編著者の長めの解説がついている。
最近、グローバリゼーションについて、もう少し知りたいなぁと思ってその種の本を読んでみている。
グローバリゼーションといえば、経済(大企業)の国境を越えた活動、のこと、、、と思って読み始めたが、この本はそういうことを書いているわけではない。
郵便や印刷技術によって、世界の各地域の人たちがつながっていく、それをアナーキズムのネットワークで見ていく、そんなことが書いてあった。
グローバリゼーションという言葉で表される現実が、否定的なものになっている、、たしか、80年代って、グローバリゼーションって、左翼的な人や知識人にも肯定的に語られていたよなぁ、となんだか落ち着かない気分もする。自分が、反グロと言われる運動に関わったりもしているだけに、何が、いつ、どこで、変わったのか、という気分もある。昔、肯定的に語っていた人たちは、それが戦略的なもので、資本主義を加速させることによって瓦解させる、なんてことも言っていた気がする。その人たちも、今は、状況が変わったから、とちょっと言い訳じみて聞こえもすることを言いながら、グローバリゼーションには反対している(はず)。
この本を読んで、グローバリゼーションに希望を見いだしていた時、その実質が何であったのか、ということを、なんだか思い出させ、そしてそれを深めてくれた気がする。
簡単にいえば、反グローバリゼーションの運動が、現在もっともグローバルな運動である、ということが表している何か。
相手がグローバルなら、対抗する方もグローバルじゃないといけない、、という、ある意味当たり前のことでもある。同時に、グローバルに対抗するには、様々な程度と様態でもってナショナリズムが絡んでいる。
そして、アナーキズムのネットワークが中心になっている運動でもある。
この講演の中では、たぶん触れてなかったが、アンダーソンが語っている19世紀末のアナーキズムのネットワークの話と相似することが、現在起こっている。
アナーキストの合意形成をするための仕組みが、リソグラフで印刷され日本でも流通したり、当然インターネットを介しての様々な情報交換が行われている。
おそらく日本の人は誰も知らないような(それは新聞記事にもなかなかならない)日本の野宿者の排除についての抗議がヨーロッパや南米から起きたりする。
それも、やはりグローバリゼーションなのである。
アンダーソンは、そういうことをきっと語ろうとしている。(たぶん、ネグリもそうなのかもしれない、、。よく読んでないけど。)
が、本当に気になるのは、大企業などのグローバリゼーションとそれが可能にする部分もある人のつながりという意味でのグローバリゼーション、それが、どういう関係にあるのか、ということだ。切り分けられるところはあるのか、ないのか。
「自分たちの手で自分たちのペースで自分たちのことを決める」という観点から見ていくのが大切だろうが、しかし、大津波のように基盤自体を変化させていく中で、どこに立てばいいのかも分からないところがある。
編著者の解説は、かなり分かりやすい。
この文体は、知恵の樹(バレーラ・マトゥラーナ)をなんか想起させた。だから、何ってわけでもないが。
あ、アンダーソンの「想像の共同体」と吉本隆明の「共同幻想論」との相違というのは、関心あるが、思ったより似てないな、というのが第一印象である。
アンダーソンは、英語以外の言語を修得することが大切だと講演の最後に言っている。何度やってもダメということもあるが、英語自体の「帝国主義」ぶりが萎えるところもあるので、なるほど!と思った。韓国語や中国語を勉強すればいいんじゃん、と思い立った。
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by isourou2 | 2011-11-26 01:51 | テキスト

柄谷行人政治を語る(図書新聞 2009)

柄谷行人という人は、空疎に耐えているという感じがする。表現に向かう人はだいたいそんなもんなのだろうが、柄谷氏には索漠さを強く感じる。

ずっと以前に読んだ柄谷氏の本に「隠喩としての建築」というのがあった。不完全性定理や、ドゥルーズのリゾームとかの明晰で難しい話がメインだったと思うけど、その中に、エッセイもあって、それも、催眠術のサークルに行った話だった。なんで、この本にこのエッセイが入っているのかが分からず、でもそれが一番面白かったから印象に残っている。(注)

「政治を語る」は、3時間くらいで読んだ。インタビュー集だし、厚くもないので、割とスラスラと読める。ぼくにとって発見的な考えさせられる言葉もいろいろとある。
しかし、読んでいる途中から気になって、読んだ後に印象にあるのは、そのことではない。

本の中に3枚の柄谷氏の写真がある。
1978年。表情には不敵さと優越感と若さがある。横顔である。
1982年。端正な印象がある。正面を向いているが、目はどこを見ているか分からない。
2008年。年をとった。正面を向いて、目もカメラを見ているが、どこかぼんやりした感じがする。左右の目の印象がちがう。幾分厳しいもしくは疲れた感じである。

柄谷氏は、氏を評価したポールドマンというアメリカの文学批評家が死亡したので、「想定していた唯一の読者がいなくなったので、この仕事(体系的な理論)をついに放棄しました。」と語っている。
また、中上健次に対して「彼は癌でなくなった。それから、文学と僕の絆はなくなった気がしますね。」と言っている。
また、何度か自分の性格として「受け身」「引っ込み思案」と語っている。それも、対外的には行動的だと見られた湾岸戦争時の文学者声明やNAMの時のことを指して言っている。

柄谷氏が、この本でも、様々な形で「反復」を言う。1990年代は1930年代の反復だ、とか明治と昭和は対応している、とか。そういう話を以前読んだ時に、なんだかピンとこない感じがした。まぁ、そうもいえるのかなとは思ったけど。この本では、90年代は新自由主義になったので見込みがちがったと言っているが、60年周期ではなくて120年周期だったと訂正して、反復しているという話は撤回していない。
しかし、まぁ話としては面白いけど、、。というもので、あんまり本気で言うのもどうかと思う。ある部分を切り取れば反復しているように見えても、無数の変数が関わっているので、決して同じにはならない。歴史というのは、一回性のもので、無限の必然の束(それは偶然ということだが)のはず。そして、偶然という認識がなくなることは、病理であると共に、未来の予測ができることになる。そのため、反復しているというのを強調すると、それはオカルトの世界に近づく。
オウム真理教が、柄谷氏の年表に基づいて1999年と昭和16年(真珠湾攻撃)を照応させて、サリン事件を起こしたと、上祐氏が認めたという話を柄谷氏はしている。

特定の個人への愛着と受け身であることとオカルトへの傾斜というのは相互に関係している。
おそらくは、そこが柄谷氏の素質に近い場所なのだが、しかし、そこから出ること、が氏の哲学的批評的試みの機動力になっているのではないか。しかし、行動的であることが受け身であること、「天の声」に従う時に行動的であること、そのような場合、その外へ出ることは困難だろう。氏の明晰さを持った格闘(形式化の問題)は、そのような素質の構造に対してのものでもあるだろう。

このインタビューの最後で、繰り返しデモに期待を寄せているが、2011年9月11日の素人の乱を中心とした反原発デモで柄谷氏はスピーチをしたそうだ。また、デモ時の逮捕者に対する不当を訴える記者会見もやったということだ。それを聞いた時、意外な感じがしたものだが、これは柄谷氏にとって何度目かの「外に出る」行為なのかもしれない。

(注)ネットで調べてみたら「ある催眠術師」というタイトルだった。講談社学術文庫にする際には、省かれているので、単行本にしか含まれていない。
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by isourou2 | 2011-11-05 00:52 | テキスト


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