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東京下町山の手1867ー1923(エドワード・サイデンステッカー 安西徹雄訳 TBSブリタニカ 1986)

日本について研究する西欧人、に興味がある。
まずは煩雑な日本語を学ぶ必要があり、しかも旧仮名や古文も読むことが出来ないといけない。その上で文献を渉猟し、日本人を凌駕するような日本についての博識をえる。
経済大国となった以後のビジネスにおいての関心なら分からないでもないが、特に過去においてそのようなことをするモチベーションがどこにあるのか。日本における欧米の研究者とはまるでちがう動機がそこにはあるだろう。(軍事的な必要に迫られた日本研究というのも過去にかなりあっただろうけど、、、)
要は、これらの外国人はことごとく変わり者なのではないか。すんなりと西欧の近代文明にとけこめない人たちが日本研究などにうつつを抜かしていたのではないか。
そんな気もする。その上、そうはいってもそれらの西欧人の目に写る日本というのは、それなりに相対化されているはずで、外部的な視点というのも面白いものだと思う。
そんなわけで、外国人の手による日本研究というのをポツポツと読んでいこうと思っている。

まずは、これ。軽い社会風俗誌といえば、そうだが、なんでこの人ここまで知っているのか??というほど目配りの利いたエピソードが散りばめられた飽きない本である。
そして、この本は永井荷風に捧げられている。
それでだいたいのベースに流れる感覚は分かるだろう。江戸文化が失われていくことに対する哀惜の念。そのような視点から、大衆文化の旺盛な力に驚きつつも、明治大正と時代とともに東京が移り変わっていくのを眺めている。そんな外人。これは、やっぱりなんだか奇妙なことではないか。そして、やはりそういう奇妙な人にぼくもまた共鳴と哀愁を感じるものである。
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by isourou2 | 2012-04-13 19:30 | テキスト

あの戦争と日本人(半藤一利 文藝春秋2011)

この人もう80歳なんだな。
1930年生まれというのは、31年に満州事変があるので、戦争と共に育ち敗戦のころに一番多感な頃を迎えたということである。
最近は語り下ろし、という形でけっこう本を出している。
まぁ、読みやすい。平易な読み物として面白い。
戦争中の経験と編集者としての経験や勉強の成果が、さすがに80歳になると折り畳まれていて飽きない。
この人の語る昭和史というのは、かなりの影響力もあるのではないだろうか。
その点では、昭和天皇に対する過剰な敬愛や、戦争そのものを否定する視点の弱いこと、が気になるところであるが、おじいさんのヨタ話として読むこともできるという、、、そういう本である。

あと、明治になって伊藤博文の外遊(明治15年)の後に、国家の機軸に天皇を立てることを(改めて)思いついた、とあるが、どうなんだろう。はじめから、王政復古だったわけだし、、、。
また、日本の上層部がポツダム宣言の受諾をした大きな理由は、本土決戦になった時の共産主義革命を怖れて、とあるが、これも驚きである。国内にそういう機運はあったとは思えないが、、、。特高資料の国内の落書きというのには、そういう種類(革命を望む)のものもあったはずだから、まったく潮流としてないとも言えないだろうが、先導する運動体もないし、にわかには分からない不安ではある。

耐えて耐えたあげくその限界において鉄鎚を食らわせる、という構造が好きな人たちなんだなぁ、、というのが、この本を通じての日本人像としてある。
そういうドラマに自分たちを取り込んでいくというか。
そして、その鉄鎚においては、我慢していた分だけ無法が許されるという、、。
三国干渉から日露戦争をへて太平洋戦争という流れには、そのようなドラマがあちこちで埋め込まれている。
終戦の詔書にしても、一番引用されるところは、「耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍び」である。そういうことに、ぐっとくるので、入れてあるのだろうし。
もちろん、力道山にしても、ヤクザ映画にしても、同じ構造である。
たぶん80年代くらいから影の薄れた発想ではあるだろうが、経済が悪くなるといつ復活するか分からない。

著者が述べる昭和史の教訓「熱狂するなかれ」は、もちろん、押しつけがましくはそれほどない(ゆえにその心配が比較的少ない)この本にも当てはまる。
著者の見解を一応腑分けしながら楽しく読むならいい本である。
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by isourou2 | 2012-04-03 01:36 | テキスト


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