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光芒と闇「東急」の創始者五島慶太怒濤の生涯(菊池久 経済界)

 まぁ、正直、取るに足らない本ではある。渋谷(の再開発)について関心があるので、東急、のことを知っておかなければいけない、と思い読んでみた。猪瀬直樹「土地の神話」や大下英治「東急帝国」、も借りたけどまだ読んでない。とりあえず、入門として簡単に読めそうという理由。
 ただ、「闇」というから少しは批判的な距離を取っているのかと思ったが、ページをめくるに従って単なる<よいしょ本>になっていく。
 日本の侵略の尻馬に乗って「大東亜共栄圏内の交通とホテルは、わが東急で独占してみせる。」と言っていた五島は、終戦後公職追放(東条内閣の運輸通信大臣だったため)にあうが、復帰した時のコメントでは「自由貿易が理想的に実行されるならば、領土など問題ではない。考えてもみたまえ、一九世紀から二〇世紀の初頭までは、英国はあの小さな本国だけの領土で、商業によって世界を圧倒することが出来たではないか。~こんどは経済力によって自然と東亜民族の繁栄を促進する「共栄」が出来るわけだ。」などとのたまっている。
 それに対して著者は「大変な達見だ」とくるから、アホらしい。
 まぁ、こういう起業家というもののメンタリティがおぼろげながらも伝わってくる本ではある。そして、渋谷の街の開発はこのような支配と権力に依存し他者の痛みに鈍感になってしまった人間によって展開してきたわけである。五島慶太の長男が「昇」、次男が「進」、合わせて「昇進」、慶太がまだ官僚だった時の命名だが、これには苦笑した。
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by isourou2 | 2013-01-31 18:53 | テキスト

思想地図VOL.3 アーキテクチャ(日本放送出版協会 2009)

・共同討議「アーキテクチャと思考の場所」(浅田彰、東浩紀、磯崎新、宇野常寛、濱野智史、宮台真司)について

当世の希代な論客が集まっている、、、はずだったが。真面目に読み始めたが、途中で吹き出してしまった。話が面白いからではない。単にこっけいなのである。不条理ともいえる。不条理というのは、その場にいる人を矮小にこっけいに見せる。そして、それが、自分の似姿である、ことであることに最終的には連結させる方法である。これらの人たちは、身を挺して、不条理劇を演じて見せているのだから、えらい。この討議の場が何なのか、何のために出席しているのかが共有されているようには見えないのだ。冒頭で、浅田は「急に振られても困るんで、~、最初に東さんの言われた問題設定は実は初めて聞いたんで、文脈がまるで分かっていない。」磯崎は「まずは恐縮しています。」宮台は「~、すでに半分ほど時間が経過した段階で、なんとなくこのシンポジウムは失敗しているような印象がしてきましたので、」。
シンポに先だって、若手の濱野、宇野、からの短い基調講演があるのだが、それを受けての東の要約がひどい。特に、宇野の講演の要約にいたっては、まるで違うことを言っている。「誤配」どころじゃない。宇野が簡単に講演の要旨を繰り返すことになったが、まずここで唖然とせざるえない。出席者は、この時点で「失敗しているような印象」を抱かなければ嘘である。東と宇野の間にある背景は知らないが、ここでの東は宇野の言葉に感情的になって聞き取ることが出来なかったか、単に聞いてなかったのか、どちらにせよ不可解である。
距離感をもって出席していた浅田が議論を成立させようとがんばる「いい人」だったり、建築を批判していたはずの磯崎があくまでも建築家としての言説に終始する「まじめな人」だったりする中、東の司会者としての迷走ぶりと宮台のこの場の設定自体を問う、というか無意味化する攪乱ぶりが目をひく。しかし、アーキテクチャを問うと、その問うている場自体を問うことになる、ということが要請されることを察知しているような宮台にしてもなんだか中途半端である。笑える山場は、浅田がもう帰りの時間だから、とシンポの途中で退席することとその後の宮台の急に気の抜けた発言である。
この雑誌の巻頭言はいつも妄想気味な感じがするが、それでも「私たちは、イデオロギーにではなく、アーキテクチャに支配された世界に生きている。したがって、必要なのは、イデオロギー批判ではなくアーキテクチャ批判である」という言葉の勢いを真に受けて読み始めると実に肩すかしである。妄想気味というのは、やけに新しい事態の到来を強調するからであって、それは、浅田のように「あまり新しさを感じない」という反応とのやりとりを喚起することになる。この新しい事態の強調は、本としての「商売っけ」だとしても、なんだか東自身それを思いこもうとしているような部分が見受けられる。実際は、そもそもあったものがテクノロジーなど何らかの契機によって顕在化し顕在化の通路が作られたことによってより強化されるという過程があるだけである。東の場合、新しさの強調が、そこで古いとされているものへの抑圧として働いていることに注目すべきだろう。この場合であったら、イデオロギー、という言葉である。このシンポを読んで分かることは、アーキテクチャ批判というのは、アーキテクチャの分析を通してのイデオロギー批判が必要ということで、それに対しての抑圧がシンポを機能させない大きな原因であることだ。巻頭言自体、つまりは、東の編集意図からして疑問、ということになる。アーキテクチャ(設計)には、設計者の意図(イデオロギー)があるし、それを踏み越えるような使用の仕方があっても、それに対しては意図に沿うようにアーキテクチャを変更したり、もっと明示的な方法を取ってくる。24時間やっているマクドナルドがホームレスが夜間増えてくると掃除の時間を深夜に設け通時でいられないようにしたり、場合によっては特定の人を入店拒否したりする。
このような問題意識をもって発言しているのは宇野だと思われる(講演で『アーキテクチャの層だけのコミットでは「だれが設計を担うのか」問題が残る』としているし、「思想や批評を麻痺させているものがあるとしたらこのような「誰が線を引くのか」という問題を横に置いたまま「もはやアーキテクチャしか語るべきものがない」という前提からはじめてしまう態度だと思います。」)が、宇野の発言は東によってことごとく無視される。宮台や浅田などの先行世代に気を使っているのと対照的で、対話する意志がないかのようだ。宇野の最後の発言としては「途中から完全に聞き役になっていたのですが、~。~、6割ぐらいどうでもいいなと思って聞いていました。」となる。基調講演をさせながらその内容も、シンポでの発言も、無視されたらこうなるのは当然で、宇野という人がどんな人かよく知らないが、同情するし、東という人の露骨な政治性がこのシンポを麻痺させているともいえる。つまりは、それがこのシンポのアーキテクチャを設計した東のイデオロギーで、そのイデオロギーとシンポという現実の結実は切り離せないという生きた見本になっている、という意味で非常に示唆に富んだ笑えるシンポジウムである。
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by isourou2 | 2013-01-16 19:45 | テキスト


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