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WEEKEND(ジャン・リュック・ゴダール 1967年)

高校生の頃から、現在までそれなりにゴダールの映画は見てきた。熱心に見たわけではなく、なんとなくだから、たぶん半分くらいを見ている感じだろう。しかし、これまでそれほどピンとはこなかった。何かいつもインテリくさかったりアートくさかったり、要はあまり面白くなかった。しかし、今までゴダールを見捨てなくて(見捨てられなくて)良かった。それは、この映画を見たからだ。ウィークエンドは完璧に近い。このテンションの持続、覚醒、笑い、は奇跡的。もちろん、映画についての自己言及などの悪い癖というか無駄にポストモダン的とも現在から見えるところ、長い帝国主義批判や暴力闘争への言及は人によってはだれるかもしれないが(この映画に関してはそれほどぼくは気にならないが)、しかし、この映画でのゴダールの感覚は卓越している。おそらく、多くの人(映画に限らず)が目指したがたどり着けなかった境地に、やすやすと着地している。演奏が終わってみると誰が何をしてそうなったのか分からないけど最高だったジャズのセッションみたいな映画である。しかし、ゴダールだけはひらめきのただなかで冷静に効果を計算も出来ている、完全に映画を掌握している。すごいねぇ。こういう全能感にひたされた作品というのは、微妙なバランスで成立しているはずで、おそらく生涯でそう何度もない出来事(たいていは一回きり)だろう。たとえば、69年の「東風」にはこのテンションはなく、バランスと出口を失った残滓があるだけだ。「勝手にしやがれ」や「気狂いピエロ」を見てもピンとこなかった人は、ウィークエンドを見てほしい。67年にこの映画で、映画が前進できる広大な領野が開拓され、そしてそのことによって、映画はほとんど終わってしまっていることが確認できるはずである。
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by isourou2 | 2013-04-18 19:52 | 映像

闇市の帝王 王長徳と封印された「戦後」(七尾和晃 草思社2007)

王は、新橋や渋谷など各地の焼け跡にマーケットを作った中国人。この本が出る時点では存命で、王のインタビューに基づいて構成されている。なので、特に、新橋・渋谷の戦後に関心を持つ人にとっては、必読である。闇市やマーケットについては、当事者の声は、ありそうでなかなかなかったためにこれは非常に価値がある。ただ、王以外に、マーケットに店子として入っていた人や王の当時の直接の知り合いには取材出来ていない。渋谷の闇市で屋台を出しマーケットに行ったことがある1人から話を聞いているだけである。「口をつぐむ生き証人」という章もあるのだが、たしかに焼け跡やマーケットについての当事者の話を聞くのは困難があっても、これは少し怠慢な気がする。引用も多く(その中には有名な本もある)、むしろ王のインタビュー集が読みたいと思ってしまった。でも、こういう人の話は、あちこち飛んだり、意味がとりづらかったりするんだろうとは思うから、インタビューという形は難しいのかもしれない。
 この本の中には、自分の関心にひっかかるところが色々あった。たとえば、渋谷について。後に東急文化会館が建つ渋谷東口駅前のマーケットについて記述が興味深かった。ここも、おそらく強制疎開跡地だったのだろう。王の話だと、2階は連れ込みになっている店が多かったようである。東急の五島慶太とは、王の愛人(後藤新平の元愛人)に五島が借金をするために王の家に訪れたことから知り合いになった、という。
 王が、東京に近い島に国営賭博場を作ろうと政治家に働きかけていたという話から想起したのは、石原慎太郎。石原は「三国人」などと平然と差別的な含意をもって発言していたが、この焼け跡のころに培われた発想・行動が基盤になっている人の気がする。石原と王の発想が同一なのは皮肉である。
 王が銀座にたてた黄色合同会館は行政代執行で壊されたのだが、このことも自分が行政代執行の裁判に関わっていることもあり、気になった。この行政代執行は、王が服役中に行われている。自分で除却できない状態を狙って、代執行という形をとるのはかなり不当なことだと思う。しかも、除却した荷物を東京都は紛失している。これは、明らかに損害賠償責任がある。
 王にまつわるエピソードはどれも面白い。こういう戦後のどさくさを生き抜いた人たちの蠢きが、現在にも様々な影響を与えていることを感じさせる本であった。
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by isourou2 | 2013-04-08 20:49 | テキスト


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