<   2014年 10月 ( 1 )   > この月の画像一覧

独学者のための英語学習本ガイドコーナー その3

英文読解の透視図(篠田重晃、玉置全人、中尾悟 研究社1994)

もう20年前の参考書である。でも、おそらく現役で活用されているだろう。誰に?もちろん、受験生である。
難関大学の長文読解のための参考書なのである。著者は、河合塾講師。そんなもん、今さらやる気するか。というか、受験勉強などしなかった口だから、今さらも何もないのだが、学校英語・受験英語の弊がこれだけ説かれている今、40才を超えて受験参考書をやるなどというのは、たしかに何か違う。相当な説得力がなければ、目的の是非を問わない闇雲さなどすっかりないのだから、ページを開く気すらしない。しかし、この本(参考書)は、その説得力がある。
学校英語・受験英語の偏りや無効さをその結果から説く人は多い。というか、これだけの難題をこなす勉強をして、有名大学を出てもちっとも英語をはなせない人がたくさんいるのは事実だろう。しかし、それをいう前に、英語以外の学校の勉強、受験勉強は何か役に立っているのか?おそらく、何も覚えていないし、全く役に立っていない。それが、問題にされないのは、単にそれを必要とする機会や状況がその後のほとんどの人の人生にないからだ。英語の場合、それなりに、必要とする機会はある。英語で道を聞かれたりすることは誰にもあるが、いきなり物理や数学の知識が要求されることなどない。しかし、たとえばそのような知識を必要とする分野で活動している人にとっては、高校での知識は前提として十分に役立っているはずだ。
英語の場合も同様である。ほとんどの人にとって、英語は必要がない。だから、実用する機会がないので、勉強してもすぐに忘却の彼方へと葬られる。脳だって、使わないことを貯めとくほど在庫整理が下手ではない。しかし、その他の教科とちがうのは、たまに、場合によっては切実に、必要とする機会が存在するのが英語だという点だ。その時になって何も出来ないことと、過去の懸命な勉強の対比が、学校英語や受験英語への批判や不信の底にはある。でも、使ってないのだから、忘れたのは当たり前。数学の公式、何か覚えてますか。
と、受験英語を弁護するのも自分ながら謎ではあるが、要は、受験英語も実用の必要が前提ならば役には立つはずだろう。ましてや、いい加減大人であろう著者たちは、受験という事態に対して、そのむなしさも熟知しているだろうし、またその子供だましの職業的要請もまた下らないものであることを日々思っているであろうから、その要請に応えつつもそれを超えた部分で本当に将来に役立つものをどうにか組み入れたいという思いは、抑えきれないでしかるべきだと思う。と期待する。また、予備校講師は、学校教員という枠に納まれない部分と学校教育よりさらに受験マナーである現場、という屈折を抱えた人たちだろうと思う。想像する。
そこで、「英文読解の透視図」である。とりあえず、一読した。ほぼ毎日やって約1ヶ月。10ページくらい進むのに1時間以上はかかる。とにかく内容は濃い。パズルのような入試試験の長文をテキストにして、間違えやすいポイントを徹底的に扱っている。その読み解き方は、文型(主語・目的語・補語)と各詞の働きという平易で基本的なもので一貫性があるのが、特徴である。その読解においての読み誤りやすいポイントと解説は、ぼくにとっては非常に参考になり、また教材として隅から隅まで手抜きが全く感じられず続けられる安心感がある。その内容の濃さゆえに、時間がかかる作りにかかわらず、読了できたわけである。おそらく、非標準的語順を含む長文読解において、かなり有効なのではないかと思う。しかし、なぜ、そのような形に(たとえば、倒置とか移動とか強調とか)なっているのかという文法の原理的な説明はほぼない。そのような追求よりも、いかに読みこなすかというところに力点がある。それは受験参考書の限界でもあるが、読解の実用においてもそのような追求は必ずしも必要ないだろう。ぼくのような人文的発想の人はそういう原理的な部分に興味を持つのだが。なので、情報構造や機能文法といった、最近の受験参考書でも取り入れられている、原理的な部分は欠落している。よって、ライティングの上達にはこの本は直接的には役立たないだろう。あくまでも、読むにはどうするか、という追求であって、ただその丁寧さの熱量は半端ではない。
しかし、最後にある、JSミルを引用した卒業問題をやってみて、暗然とした。ぜんぜん読めてない。
うーーん、もう一回やるべきか、、、。
[PR]
by isourou2 | 2014-10-24 21:30 | テキスト


日々触れたものの感想をかきます。


by isourou2

プロフィールを見る

カテゴリ

全体
音楽
テキスト
映像
オブジェクト
未分類

以前の記事

2017年 08月
2017年 05月
2016年 11月
2016年 08月
2016年 05月
2016年 02月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 09月
2015年 07月
2015年 04月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 05月
2014年 03月
2013年 11月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 06月
2013年 04月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 07月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2008年 01月
2007年 12月
2007年 05月
2007年 01月
2006年 12月

お気に入りブログ

ホームレス文化

最新の記事

ポメラその2
at 2017-08-07 17:24
私に構わないで(ハナ・ユシッ..
at 2017-05-31 20:32
心理(荒川洋治 みすず書房2..
at 2016-11-13 00:20
蜘蛛女のキス(プイグ 野谷文..
at 2016-08-06 21:10
ポメラ
at 2016-05-13 00:06
日本人の英語はなぜ間違うのか..
at 2016-02-07 01:29
闇市(マイク・モラスキー編 ..
at 2015-12-16 19:55
ルポ過激派組織IS ジハーデ..
at 2015-11-23 22:09
英作文なんかこわくない(猪野..
at 2015-09-23 01:31
英会話なるほどフレーズ100..
at 2015-07-27 00:46
生存権ーいまを生きるあなたに..
at 2015-07-08 19:36
銃殺(ジョセフ・ロージー 1..
at 2015-07-08 18:00
奇怪ねー台湾(青木由香 東洋..
at 2015-07-05 23:51
物語 近現代ギリシャの歴史~..
at 2015-07-05 23:50
独学者のための英語学習本ガイ..
at 2015-04-15 00:31

この記事に対する感想は

abcisoourou@gmail.com(abcを削ってください)
まで
お願いします

外部リンク

その他のジャンル